ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・岩隈久志編~
文=Daisuke Sugiura
マリナーズで5年目のシーズンを終えた岩隈久志は、今では“メジャーでも有数の過小評価されているピッチャー”と言えるかもしれない。
今季は4月に0勝3敗という最悪のスタートを切りながら、最終的には33試合で16勝12敗、4.12という成績をマーク。防御率こそやや悪かったが、勝ち星は2014年に挙げた15勝を上回る自己最多だった。野茂英雄(3度)、松坂大輔(2度)に続き、メジャーで15勝以上を複数回成し遂げた史上3人目の日本人投手になっている。
投球回数199回も自己2位タイ。今季のマリナーズはシーズン終盤までプレーオフ争いに絡んだが、その健闘は34歳の日本人右腕の頑張りなしにあり得なかったはずだ。
「日本でも大物ではあったのだろうけれど、ダルビッシュ有、松坂ほどに名前を知られていなかった投手が、今ではスーパースター級の数字を残すようになった。クマの入団時には、ここまで凄い投球をするとは誰も思っていなかったのが正直なところです」
シアトルのラジオ局のレポーターとしてマリナーズの取材を続けてきたシャノン・ドレイヤー記者は、2014年の時点でそう証言していた。今季に5年間で3度目の14勝以上を挙げた岩隈は、依然として周囲を驚かせ続けているのである。
これほどの実績を残しながら、岩隈の知名度はなぜ上がらないのか。メジャーではケガが多く、フィジカル面で弱いという印象が付きまとっているのが大きいに違いない。そして何より、過去5年で一度もプレーオフに出場しておらず、メジャーリーガーとして大舞台に立った経験がほぼゼロなのが響いているのだろう。
岩隈本人は十分な実績を残してきたのだから、ポストシーズンに出れないのは不運な面もある。そんな背景があるからこそ、来年3月の第4回WBCでは再び日本代表を背負ってマウンドに立って欲しいと願わずにはいられない。
2009年の第2回WBCでは、岩隈は出場した全投手の中で最多の20イニングを投げ、防御率1.35、WHIP0.90という見事な数字をマークした。打線の援護がなかったために1勝1敗に終わったが、優秀選手賞を受賞。投球内容は3勝を挙げてMVPを獲得した松坂に勝るとも劣らず、評価を大きく上げる結果になったのだった。
そんな岩隈にとって、来春のWBCはベストのタイミングではないのかもしれない。右肘に不安を持つ上に、2018年の契約は来季のイニング数次第。それら事情もあり、3月という早い時期の実戦を本人が希望するかどうかは微妙ではある。
ただ、もしも出場が叶えば・・・35歳を迎えても上質なコントロールと投球術を保った大ベテランは、侍ジャパンにとって貴重な武器となる。そして、岩隈本人にとっても、各国が過去最高のメンバーを揃えてきそうな第4回WBCは、その実力と真価を改めてアピールするには絶好の舞台となるはずなのである。
ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・岩隈久志編~
ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・青木宣親編~
ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・川﨑宗則編~
ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・前田健太編~
ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・ダルビッシュ有編~
ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・上原浩治編~
ニューヨークからのレポート ~MLB戦記 番外編・田沢純一~
ニュース
- 2017.3.23
- アメリカが悲願のWBC初優勝!決勝でプエルトリコを8対0で下す
- 2017.3.22
- 無念の1点差負け…侍ジャパンが準決勝で力尽き、世界一奪還の夢破れる
- 2017.3.21
- プエルトリコが延長11回タイブレーク制す 粘るオランダ破って2大会連続決勝進出!
- 2017.3.20
- 激戦を勝ち抜きプエルトリコは連勝をキープ 2次ラウンドプールF総括
- 2017.3.20
- WBC2次ラウンド プールFチーム紹介 ~プエルトリコ代表 身体能力と緻密さ兼ね備える"野球の島"~
- 2017.3.19
- アメリカ、ドニミカ共和国との天王山を制し準決勝で侍ジャパンと激突!
- 2017.3.19
- プエルトリコ、ベネズエラから18安打13得点 大会6連勝でオランダとの準決勝へ