ニューヨークからのレポート ~元日本代表戦士たちのMLB戦記・上原浩治編~

2016年10月17日 コラム

文=Daisuke Sugiura

 10月10日に行われたプレーオフの地区シリーズ第3戦でインディアンスに敗れ、上原浩治とレッドソックスの2016年は終わった。

 高レベルの東地区を制した名門チームが、プレーオフではまさかの3連敗。ポストシーズン開始前は優勝候補の一角に挙げられていたことを考えれば、残念な結果と言うしかない。そして、今季限りでFAになる上原が、レッドソックスの一員としてプレーするのはこれが最後だったのかもしれない。
「僕ももしかしたらこれで終わりっていう可能性だってあるわけですから。(契約オファーが)なかったらやめるつもりなんで」

 10日の試合後、上原本人もそう語って引退の可能性に言及していた。もっとも、実際には何らかのオファーはあるのではないか。今季は右胸筋の負傷で7月20日から戦線離脱した上原だったが、意外な早さで9月5日にメジャー復帰。そして、カムバック以降は11試合連続無失点、プレーオフでも2イニング零封と完璧な投球を続けてきた。

 41歳になる年齢、故障の多さは不安材料だが、レッドソックスのジョン・ファレル監督は今でも上原に全幅の信頼を寄せているという声も聴こえて来る。複数年契約は難しくとも、ポストシーズンの経験豊富なコントロール・アーティストを欲しがる強豪チームは他にもあるに違いない。
 来春に第4回のWBCに臨む日本代表にとっても、上原は貴重な存在になり得るはずだ。今季47イニングで63奪三振、11四球という数字が示す通り、健康な限りは依然としてトップクラスのリリーバーとしての力を保っている。メジャーで8年も活躍し、各国の強打者たちの特徴も知り尽くしている。何より、国際試合では大学時代から数えて25戦負けなし、12勝0敗と圧倒的な強さを誇っている。

 2006年の第1回WBCでは、上原は1次リーグの中国戦、2次リーグのアメリカ戦、そして準決勝の韓国戦と3戦に先発。特に韓国戦では7回を3安打無失点と綺麗に抑え、2連敗を喫していたライバル撃破の立役者になった。このときの伝説的な快刀乱麻は、WBCの歴史に残るピッチングだったと言って良い。
 日本、アメリカと続いてきた上原の投手人生が、終盤に差し掛かっていることは間違いない。国際試合での活躍のチャンスもおそらくは来春が最後。今度はリリーフ投手として、もう一度大舞台での強さを見せて欲しいと願っているファンは多いのではないか。

 まだ記憶に新しい2013年秋―――。上原はレッドソックスのクローザーとしてワールドシリーズで優勝投手になった。それに続き、今度はWBC でも日本代表の胴上げ投手になるようなことがあれば・・・それはまるで、絵に描いたようなキャリア終盤のハイライトシーンになるはずである。