ドミニカ共和国打線の強さと存在感 1次ラウンドプールC総括

2017年3月15日 コラム

「みんなカレンダーでこの日を丸で囲んでいたんじゃないかな。入場券はソールドアウトで、9イニングを通じて歓声は凄いはず。攻守、投手陣まで含め、層が厚いチーム同士だからね。このゲームは高いお金を出してでも見るべきだよ」

 アメリカのアダム・ジョーンズが事前に語った“このゲーム”とは、3月11日のアメリカ対ドミニカ共和国戦のこと――。スターが敷き詰められたメジャーの選抜チームと、前回王者でもあるラテンのタレント集団の激突。この一戦こそが、マイアミで開催されたプールCの、いや1次リーグ全体のハイライトだったといって良かったろう。

 そして、注目のゲームを制したのはドミニカ共和国。6回表まで0-5とリードされながら、マニー・マチャド、ネルソン・クルーズの一発などで6~8回に7得点を挙げて鮮やかな逆転勝利を飾った。特にアメリカの守護神アンドリュー・ミラーからクルーズが放った逆転3ランのインパクトは大きく、その瞬間、マーリンズ・パークに集まった史上最高37446人の大観衆は大爆発。母国の人々を熱狂させたドラマチックな本塁打は、WBC史に残る一撃として永く語り継がれることになりそうだ。

「ウチの打線は“凄い”を超えたレベルだ。1~9番まで(MLBの)オールスターに選ばれるような選手が敷き詰められているんだからね」
 マチャドは誇らしげにそう語ったが、実際にアメリカ戦に限らず、プールCではドミニカ共和国打線の強さと存在感ばかりが目立った。

 マチャド、ロビンソン・カノー、ホゼ・バティスタ、クルーズ、エイドリアン・ベルトレ、カルロス・サンタナ・・・多くのスーパースターを要する強力ラインナップは3試合で合計26得点を叩き出した。結果として、カナダを蹴散らし、コロンビアとの激戦も制して3連勝。前回大会では8戦全勝で完全優勝を飾ったパワーハウスは、どこまで連勝記録を伸ばすのか。今大会でも大本命と目されるドミニカ共和国の一挙一動に、今後も注目が集まり続けることは間違いない。

 ドミニカにこそ敗れたが、アメリカもコロンビア、カナダは撃破し、2勝1敗で2次リーグへの進出を決定している。クリス・アーチャー、マーカス・ストローマン、ダニー・ダフィーという3人は先発投手は、合計12回2/3で5安打無失点、無四球で14奪三振。このように先発ピッチャーが安定している限り、2次リーグでも期待は持てる。
 「ゲーム前に4、5回は鳥肌が立ったよ。“本当にこの舞台に立っているのか”と自分に語りかけた。USAと胸に刻み、国を代表しているんだからね」
 第1戦の後にそう漏らしていたアーチャーを始め、今大会では国際大会への熱い想いを抱いた選手がアメリカに多いのも好材料だ。“ドリームチーム”とは決して言えないメンバーであっても、ローラン・アレナド、クリスチャン・イエリッチ、ブランドン・クロフォードといった全米的にまだ無名の選手たちが闘志溢れるプレーを見せている。モチベーションの高い若手に引っ張られ、アメリカが第4回にして過去最高の成績を残しても驚くべきではなさそうだ。

 結局は1勝2敗で敗退したものの、コロンビアの頑張りも見事だった。ホゼ・キンタナ、フリオ・テヘラン以外は無名選手ばかりながら、アメリカ、ドミニカ共和国との対戦はどちらも延長にもつれ込む大接戦。守備と基本がしっかりしており、常に全員がハッスルすることにも好感が持てた。カナダ戦で記念すべきWBCでの初勝利を挙げるなど、近未来のさらなる躍進の予感を感じさせるに十分な健闘だったと言って良い。

 一方、良いところがないまま3連敗を喫したカナダの戦いぶりは、残念という他にない。とにかく投手陣の層が薄く、引退状態だったライアン・デンプスター(2戦に先発して防御率27.00)を重宝した起用法も解せなかった。フレディ・フリーマン、ジャスティン・モアノーのようなビッグネームを擁しながらの惨敗では、今大会最大級の期待外れチームと呼ばれても仕方あるまい。